リトルトリー
The Education of Little Tree


フォレスト・カーター (著), 和田 穹男 (訳),めるくまーる (出版)

今日のロゴ制作|リトルトリー
今日のロゴ制作|リトルトリー1
リトルトリー 小さな木とは自分の事だと ぼくは知っていた。山のきょうだいたちは ぼくが好きなんだ。 みんな喜んで迎えてくれた。 ぼくは幸福な気持ちで眠りについた。 もう泣かなかった。
今日のロゴ制作|リトルトリー2
祖父と祖母にとっては、愛と理解はひとつのものだった。祖母が言うには、人は理解をできないものを愛することはできないし、ましてや理解できない人や神に愛をいだくことはできない。祖父と祖母は互いに理解し合っていた。だから愛し合うこともできた。
今日のロゴ制作|リトルトリー3
祖母は本を膝にのせ、前前かがみの姿勢になり、静かな声で読んでくれた。縄編みにした長い髪が床に垂れている。祖父は揺りいすをゆっくり前後に揺すりながら聞いている。おもしろい箇所にさしかかると、ぼくにはすぐにわかった。揺りいすのきしむ音がピタッと止まるのだ。
今日のロゴ制作|リトルトリー3
その冬の間、夜になるとぼくたちは石づくりの暖炉の前にすわった。枯れた松の古株を取ってきて、その内側の火つきのよい部分をたきぎにする。厚くこびりついた松やにが燃えてパチパチと音をたて、炎が揺れる。反対側の壁にぼくたちの影が映って、伸びたり縮んだり、ふいに大きくなるかと思うと、また小さくなって、まるで幻想的な絵を見ているようだった。
今日のロゴ制作|リトルトリー4
「おきてというものがあるんじゃよ。」祖父は静かに話を続けた。「必要なだけしか獲らんこと。鹿を獲るときにはな、いっとう立派なやつを獲っちゃならねえ。小さくてのろまな奴だけを獲るんじゃ。そうすりゃ、残った鹿がもっと強くなっていく。そして、わしらに肉を絶やさず恵んでくれる。
今日のロゴ制作|リトルトリー5
ぼくらは目をこらし、耳をそばだてていた。木々の間の笛のように低くうなりながら、朝の風がふきはじめると、山の音はいっそう高まってきた。「山はいきかえった」目を山に向けたまま、祖父が低くつぶやいた。「はい」ぼくは緊張して答えた。「山はいきかえりました」そしてそのとき、ぼくにはわかった。祖父とぼくは、だれも知らないひとつの秘密について理解を分け合ったのだと。
今日のロゴ制作|リトルトリー6
モ・ノ・ラー、母なる大地の感触がモカシンをとおしてぼくの足裏から伝わってきた。土の凹凸や滑らかな感触、血管のように大地の体内を這いまわる木の根、さらに深いところを流れる細い水脈の生命さえも。大地は温かく弾力があり、ぼくはその厚い胸の上をピョンピョン跳ねているのだった。すべてが祖母の話していたとおりだった。
今日のロゴ制作|リトルトリー7
「男は、朝になったら自分の意思で起きるもんじゃ」ぼくを見おろし、ニコリともしなかったのである。だが、祖父は自分が起きるときにいろんな物音をたてた。ぼくの部屋の壁との境の壁にぶつかったり、いつもより大きな声で祖母に話しかけたりした。ぼくはその音で目が覚めたのだ。ひと足さきにぼくは外に出て、犬たちといっしょに暗がりの中で祖父を待った。
今日のロゴ制作|リトルトリー8
「なにかを失くしちまったときは、へとへとに疲れるのが一番いいんじゃ。」祖父は向きなおってふたたび歩きはじめたが、そのあとについてゆくのは今度は容易だった。彼は歩く速度を落としたのだ。それでぼくは、祖父も疲れているのだろうと想像した。
今日のロゴ制作|リトルトリー9
歩くにつれて山がぼくたちを迎え入れ、四方から包み込んでくれるように思われた。三人の足音が小さくこだました。周囲で何かうごめくけ気配がする。あらゆるものが息を吹きかえしたのか、木々の間からささやき声やため息がやわらかく漏れている。もう寒くはなかった。

5歳の時に、両親を亡くし、チェロキーインディアンの祖父母に引き取られた少年の物語。世界中で多くの人に愛されている素晴らしい作品です。
その物語の中から、いくつかの場面を選び、ロゴで表現しています。

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